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 それは市來さんの言葉だった。  隣に並んで一緒に登校していた女子が「嘘でしょ?雨で良いことなんて一つもないじゃん。何で?」と驚いた様子で聞き返す声も聞こえた。  そのタイミングで信号が青に変わり、団子状態だった同じ制服の集団が、少しずつばらけていく。市來さん達のその後の会話は、もう聞こえなくなってしまった。  今、傘の下で市來さんは、雨が好きな理由を話しているんだろうか。もしかしたらそれは、ビニール傘を使い続けていることと何か関係があるんじゃないだろうか。止めたはずの思考が、また走り出す。  それにしても、市來さんの友達の言う通りだ。雨が降って良いことなんて一つも無いはずなのに。  傘という余計な荷物は増えるし、傘を差していても足元やリュックは濡れるし、気温が高ければじめじめと蒸し暑い。空が暗いとそれだけで心が沈む。
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