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雨が好きだと言う市來さんの声は、人が本当に好きなものを語る時のトーンだった。
理解しがたい感覚だからこそ、逆に知りたくなった。
知らなかったことを知る、それはすごく面白いことだと僕は思う。未知の世界を覗き見るような、新鮮さと緊張感。
いや、でもそれならもう少し本業の勉強のほうにも意欲を見せてもいいはずか。それとこれとはまた別と言うか何と言うか。
もごもごと心の中でつぶやいているうちに、学校に到着してしまった。
あまり考え過ぎると、教室の中でも無意識のうちに市來さんを目で追ってしまいそうだ。それはよくない。
広げた傘についた水滴を払うように、僕は軽く頭を振った。
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