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同じ美化委員なのに本当に自分は頼りないなと思う。でも、同じ美化委員でも、僕と市來さんでは立場が違う。
市來さんには、委員長という大きな肩書きがついている。他の委員会と比べたら美化委員は目立たないほうかもしれないけど、委員長という言葉にはなんだか重みがある。だからつい、頼ってしまう。
実際、定例会の時に場を仕切る市來さんの姿は、まさに委員長にふさわしい。僕には備わっていないそつのなさを市來さんは持っていて、そしてそれを十分に発揮している。
同い年のはずなのに、どうしてこうも違うのだろうか。
「一階の階段下に倉庫があって、右のほうに新しい清掃用具が揃えて置いてあるの。そのすぐ近くに、廃棄って書いてある段ボール箱があるから、このちりとりはその中に入れておけば大丈夫」
「わかった」
「新しいちりとりには、これと同じようにクラス名書いといてね。油性ペンで」
「はい」
思わず返事が敬語になった僕を見て、市來さんはくすりと笑った。
「帰りのホームルーム終わったら一緒に行く?」
「えっ、あ、いや…大丈夫。なんか、悪いし」
「美化委員の仕事をちゃんと把握してない時点でもう十分悪い子じゃない?」
これはからかわれているのだろうか。返答に困っている間に「冗談だよ」と先手を打たれてしまった。
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