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教室に着く頃には、もうしびれはだいぶ治まっていた。でも今度は違う意味で、脳に衝撃が走った。
誰もいないと思っていた放課後の教室に、市來さんがいたのだ。
窓際に立って、外を見ていた。窓枠に手をかけて、ほんの少し見上げるように。おそらく、空を凝視している。
教室の後ろの出入り口のすぐ脇に、掃除用具入れのロッカーはある。扉の開け閉めでどうしても音は立ってしまう。それでもなるべく静かに開けようと僕は努めた。
けれど、人の気配を感じたのか、市來さんはぱっと後ろを振り返った。
「おかえり」
どうしてそういうことをさらっと言えてしまうのか。ああ、だか、うん、だかまたよく分からない言葉を僕はもそもそ呟きながら、ちりとりを所定の位置にしまった。
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