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「…曇りより、雨のほうがいいの?」
「うん。雨、私好きだよ」
いつだかに聞いたキーワード。上手く引き出せたことに、自分の心臓がどきりと鳴るのが分かった。
「どうして…?」
「んー…雰囲気、かな。晴れの日にはない空気感が、落ち着くんだよね」
「…そうなんだ」
話しながら、僕は市來さんに言われた通り、ちりとりと点検表への記入を終えて、ロッカーの扉を閉めた。これでやっと、一通りの仕事は完了だ。
市來さんはもう一度、窓のほうに歩み寄った。
やっぱり、空を見ていた。雨を待ちわびているのが、背中越しでも伝わってきそうだった。
後ろ姿に向かってなら、思い切って聞ける気がした。
おかしな質問なのかもしれない。でも、聞くなら今しかないと思った。
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