【3】

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「…びっくりした」  きょとんとして、目を丸くしていた市來さんの顔が、少しずつほどけていく。僕の気のせいじゃなければ、その()に小さな輝きが生まれているようにも見えた。市來さんは、笑っていた。ひとまず、気を悪くはしていないことに、僕はほっとした。 「それ聞かれたの、初めて」 「ご、ごめん。変なこと聞いて」 「ううん、謝らないで。むしろ嬉しいの。なんか、すっごく嬉しい」  恥ずかしがるような、はにかみ方だった。  こんな反応が返ってくるとは思っていなかったから、僕は反射的に市來さんから目をそらした。何故だか、直視できなかった。 「…嬉しいの?」 「うん。自分でも、なんか…変な感じ。こんなに嬉しいものだなんて」 「…理由、あるの?」 「ビニール傘を使う理由?」 「うん」 「あるよ」
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