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やめてくれ、と頭を抱えたくなった。これじゃ本当に、僕がちゃんと美化委員の仕事を遂行したのを見届けたみたいじゃないか。
でも、市來さんの行動は僕の想像を超えていた。
「だから、一緒に帰ろう」
「…へっ?」
とても間の抜けた声が漏れてしまった。何がどうなって「だから」という接続詞が選ばれたのか。
それでも市來さんは、混乱している僕をよそに、淡々と帰り支度を進めていく。
「あ、もしかして今日放課後残ろうと思ってた?」
「いや…もう帰るつもりだったけど…」
「じゃあちょうどいいね」
市來さんは納得しているけど、僕は全然納得していない。いや、拒否はしない。嫌悪感もない。そういうことじゃなくて、ただ、この展開に全くついていけてないのだ。本当に、僕の身に起こっていることなんだろうか。
「何ぼーっとしてるの」
「え、あ、いや…」
「どうせなら、帰りながらのほうが教えるのに都合がいいんだよね。あー…でも今雨降ってないんだっけ…」
後半はもはや独り言化していて、市來さんはもう既にカバンを肩にかけていた。
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