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上履きを脱いだところで、ふと、「河野くん」と声がした。
女子に話しかけられることがあまり無いから、しかもこんな所で–––反射的に、身体が少し強張った。
後ろから呼び止められたから姿は見えなかったけれど、誰の声なのか、僕はすでになんとなく分かっていた。
振り返った先にいたのは、やっぱり、クラスメイトの市來さんだった。
普段話す機会は無くても、同じクラスなら誰がどんな声なのかは大体分かるものだ。授業中の発言だったり、休み時間中に聞こえてくる声だったりで。
それに市來さんとは、他の女子と比べると、ほんの少しだけ話す機会が多かった。同じ美化委員なのだ。
もちろん話すと言っても、委員会の定例会議の中でだったり、その他の委員の仕事の一環としてコミュニケーションを取る程度ではあるけれど。
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