【4】

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「もう降ってこないのかなー…」  僕を引率しながら、市來さんは恨めしげに空を見上げた。辺りには、湿った匂いが漂ってはいる。アスファルトも濡れているから、少し前まで雨は降っていたんだろう。  一方の僕は、市來さんの右手に握られたビニール傘に視線を落とした。  真横で見ても、やっぱり何の変哲もない、ごくごく普通のビニール傘だった。 「ちなみに、何だと思う?」 「え?」 「私があえてビニール傘を使う理由」  とん、とん、と歩くリズムに合わせて音が鳴る。ビニール傘の先端が、アスファルトに軽やかに弾かれる音。 「…値段が安いから」 「違う」 「…視界が覆われないから。前がよく見えるから」 「近い」
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