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「リュック、開いちゃってるよ」
「え」
「後ろ。チャックが開いたまま」
あ、と僕は慌てて、再び赤ちゃん抱っこの体勢に戻り、全開のチャックを閉めた。傘を取り出したらそれで満足してしまった自分に、自分で呆れる。
僕には、こういう所がある。自分で言うのもどうかと思うけど、少し、鈍臭い。
クラスメイトの女子に指摘されるなんて恥ずかしいことこの上ないけど、でも言ってもらえてよかった。
このまま気付かないで電車に乗って、けれどガバガバに開いているリュックに関しては誰にも何も言われず、妙な視線だけを感じることになったらそれこそ恥ずかしい。
「ご、ごめん。ありがとう」
「謝ることじゃないでしょ」
「そう…だよね」
「折りたたみ傘を出して、それでチャック開けたままにしちゃったとか、そんなところ?」
「えっ…見てたの」
「ううん、見てはないけど。外、雨降ってるみたいだし、河野くん、今手に折りたたみ傘持ってるから、多分そうだろうなーって」
「…せ、正解です」
「あはは、やった。正解の賞品は?」
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