【4】

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 嫌じゃない。そういうことじゃない。  はっきり否定したかったけれど、余計な気持ちまで一緒になって(こぼ)れてしまいそうだったから、上手く言葉にできなかった。 –––何で、もう駅に着いちゃうんだ。  この時間が、いつまでも続けばいいのにと思った。終わってしまうのが、惜しかった。 「…綺麗だね」 「河野くん、ほんとに思ってる?」 「思ってるよ」  目の前の景色が、と言うより、さっきも言ったけれど、市來さんの心が。  それから、世界で一番好きな景色を見つめるその横顔も。 「ねえねえ、リュックの中びしょびしょになっちゃうよ」 「待って、本当に開いてるの?」  からかわれていることすら、なんだか楽しくて。僕は、気付かれない程度に少しずつ歩調を(ゆる)めていく。でも、勘の良い市來さんにはそれもバレてしまうかもしれない。  それならそれで、いいや。
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