1人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
市來さんが言ったように、降り注ぐ雨が心を洗っていくような感覚にはなった。
混乱して、散らかっていた想いが、雨によって整然と流されていく。でも流されてどこかへ行ってしまうわけではなくて、あるべき場所に辿り着く。
僕の中で、あるひとつの感情に、確かな輪郭が見え始めていた。
僕はもう、そのことを無視できなくなっていた。
「…自然の脅威って、怖いな」
ぽつりと呟いた僕の独り言を、「偉大でしょ」と市來さんは得意げに笑いながら拾ってくれた。
【fin.】
最初のコメントを投稿しよう!