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 市來さんが、ポニーテールを揺らしながら僕の目の前で笑っていることに、僕は静かに動揺していた。  美化委員関係無しに、こんな風に市來さんと他愛のない話をするのは、正直初めてだった。  いや、クラスメイトと下駄箱の前で鉢合わせて、ちょっと立ち話なんて、別にどうってことないんだろう。市來さんは、きっとそうだ。きっとそういう風に思っているはずだ。  目の前に、チャック全開のリュックを背負っているクラスメイトがいれば、市來さんなら声をかけるだろう。相手が誰であっても。  とりあえず、今はそんなことはどうでもいい。正解の賞品。いや、分かっている。軽いジョークだってことは。いわゆる会話のノリだってことは。だけど返すべき言葉の正解だって、あるはずだ。  じゃあ…今僕が手に持っている、この折りたたみ傘は?「賞品はこちらです」…いや、これだと一緒に帰ろうって意味にも受け取られてしまうだろうか。それは考え過ぎか?僕は一体何を考えているんだ?  それに市來さんは、市來さんが持っている傘は––––
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