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手に取った傘を、市來さんはぱっと広げた。そして同じように傘を広げた友達の横に並んだ。
横顔が、よく見える。
どんよりとした空とは正反対の、晴れの日の太陽のような笑った顔が、傘越しでもよく見える。
市來さんが差している傘が、透明だからだ。透明だから、よく見える。
雨の日、市來さんはいつもビニール傘を差している。
もちろん、行き帰りを共にしているわけじゃないから百パーセントとは言えないけど、今まで僕が目撃した中で、ビニール傘じゃない日は一度もなかったと思う。
どうして、いつも市來さんはビニール傘なのか。
それが、僕が密かに気になっていることだった。
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