【2】

2/7

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
 たまたま、朝乗ってくる電車が同じなのだ。同じ時間、そして、同じ車両。  僕は入学した頃からずっと同じ車両、同じドアの位置から電車に乗っている。席が空いてれば座るし、空いてなければドアの端あたりに立って適当にもたれかかる。  僕が乗ってから三駅目で、市來さんは姿を現す。市來さんも、おそらく乗る位置を決めているんだろう。  というか、僕や市來さんに限らず、朝の電車の顔ぶれは大体同じだ。同じ制服を着ていればなおさら、他の生徒もなんとなく覚える。  顔に限った話じゃなくて、パンパンに膨らんだ部活指定のカバンとか、リュックにぶら下がっているパスケースとか。朝目に映る風景は、毎日そこまで変わり映えはしない。  僕と市來さんは今年初めて同じクラスになったけれど、市來さんの存在は、僕は去年から認識していた。それこそ、朝の電車で何となく顔を覚えた。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加