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ダイヤモンド・ダスト
ザックザックとかき氷をしっかり味わうような、そんな元気な足音を立てて「未開拓」の地にジンは立っていた。
「桐生さん、どうしたんすか?ボーッとしちゃって」
と部下の高橋がヒョイっとジン顔色を伺った。
「いや、今日は何十年ぶりかにまさか『ダイヤモンドダスト』が肉眼で拝見出来たもんで、良いことがありそうだと思ってさ。あの日も吹雪明けだったんだよなあ」
とジンは空を見上げる。
「えっと…『ダイヤモンドダスト』って「ダスト」っていうぐらいだから、ゴミというか『ちり』のようなイメージだったんすけど、違うんすか?」
雪国に転勤してきたばかりの高橋に取って『ダイヤモンドダスト』の意味すら分からないとばかりに申し訳なさそうに頭を手でかいた。
「はは!なるほどな。そういう風にも捉えられるよな。が、『ダイヤモンド・ダスト』はむしろその逆でさ、様々な条件が揃わないとお目にかかることが出来ない奇跡の光景なわけよ」
笑いながら、ジンは説明を続ける。
「氷点下10度以下になり、天気も晴天じゃなきゃいけない。『ダイヤモンドダスト』が見れる良好な地形や湿度とかね?1つだけ当てはまれば見れるって訳じゃない」
高橋がその「ダイヤモンドダスト」を拝見出来たことや事実に感心したらしい。
「それって奇跡じゃないっすか?『神様からの贈り物』っすね」
桐生ジンは言う。
「ああ、こういう『奇跡』を発見できる瞬間にいるのも『奇跡』だしな。さあて、もう少し先に進んで未来のための設計図を考えないとな」
高橋が走ってあとを追う。
「桐生さん、時間は大丈夫なんすか?」
「ああ、時間なんか気にしなくて良いんだよ。やっぱり急ぎすぎたら色々と見失ってしまう。だから、現在を、設計図を慎重に考えよう」
二人の前方には『ダイヤモンド・ダスト』が広がり、時には眩しいぐらい七色の光を放出させている――
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