出合い

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出合い

「ねーねー!なっちゃん!あの人格好良くない?」  たくが背後から絡んできた。酒のせいで普段から舌っ足らずのたくはそれが増している。今日も行きずりの相手を探す為にたくと共に、ゲイバーに連れ立ってきた。俺とたくはここの近くの大学に通っている。ここに通う様になって1年が過ぎようとしていた。ママは「若い子がいた方が良いでしょ」というノリで未成年の俺たちも入店させていた。 「なっちゃんー!聞いてるー?」 「聞いてるよー!どの人?」 「あのカウンター座ってるサラリーマン!」  カウンターに目をやると、如何にも人当たりの良さそうなイケメンがいた。 「え、、、かっこよ」  思わず呟いてしまった。見た瞬間、心臓を抉られた感覚に陥った。何としてでも、手に入れたい衝動に駆られた。 「声掛けようぜ」 「なっちゃん、待ってー。俺も声掛けるー!」  近くまで来てみると、俺なんかが声を掛けて良いものか悩むくらいのイケメンだった。いつもの軽い感じでいけば良いはずなのだが、らしくもない、緊張して一歩が出なかった。 「こんばんはー!お兄さん、格好良いねー!」  今回ばかりはたくに助けられた気がした。俺は心の中でたくに向かってガッツポーズをした。 「こんばんは。あれ、君たち若いよね?」 「俺らねー、大学生なのー!同じ大学ー!」 「大学生?遊びたい盛でしょ。ここには良く来るの?」 「俺ら?まぁまぁ来てるー。大学が近いんだー」  俺は話に入れずたくの後ろに隠れていた。「どーしよ。いつもの感じが出ない」と内心焦っていた。どうせ誰も本気にならない場所なんだから、いつもの様に軽く切り出せばいいのにと。たくの後ろから男性の方をちらっと見てみた。目が合い微笑んでくれた。もうそれだけで、堪らなかった。 「なっちゃーん?何で隠れてんのー?」  たくに促されてドキリとした。いつもの感じを出そうと取り繕う。 「お?お!隠れてないよ!様子見てたんだよ!」  不自然にならない様にしたが、どう見えただろうか。不安で仕方なかった。「こんなのいつもの俺じゃない!」そう思いながら、笑顔を強張らせた。
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