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「翔!起きろ。今日は大学行けよー。俺、会社行くからな。起きろって。あー、もう鍵かけろよ!じゃあな」  忙しなくベッドルームのドアが閉められた。翔は怠い身体を半分起こし、スマホを覗いた。7時半。まだ寝れる。そのまま、ベッドに潜り込んだ。  大学の近くにあるゲイバーに夏樹とたまに顔を出しては、男を食い散らかしていた。俺も夏樹も今が一番遊べると豪語していた。旺盛な性慾を満たす為に尽力している。そんな火遊びを繰り返す中、浩輔と出会う。最初は一夜の関係だと思っていたが、身体の相性が良かったのだ。俺は浩輔の家に入り浸る様になっていた。浩輔一筋という訳ではなく、他の男とも女とも寝る。縛られる関係が嫌いだった。だが、気が付いたら浩輔の家に半同棲している状態だった。俺は実家住みだが、大学生ともなれば親も何も言わなかった。昔から実家には寄り付かない子どもだった。それなりに親は諦めている。それに元々、浩輔も性欲が強い。俺から見たらおっさんだけど、まだ25歳だから。実家より大学に近いって理由もあるが、浩輔の匂いがするベッドで寝るのも幸せを感じたりもする。 「まぁじ怠い。3年生になってまでさぁ、こんな基礎科目やりたくなぁい」 「本当にさ。レジュメもやらないとだし。早く夏休み来い」 「俺たちが2年ん時、単位落としたからな。それも4人仲良く」  1年生の時、飲みサークルの新歓で仲良くなった絵里香と茉優と、喫煙所で講義の後の愚痴大会をしていた。高校からの友達で、翔とセットだと言われている夏樹は割りとしっかりしている方だ。真面目だが抜けていて、ある程度の遊び人だった。それで翔とは気が合う。危なっかしい翔を見守る役でもある。梅雨でジメッとした陽気が続く季節。少し日が伸び始め、5限が終わっても外は明るかった。しかし、この時間まで大学にいる学生は余りおらず、喫煙所は貸し切り状態だ。 「これからさぁ、飲み行かぁん?茜がぁ、1年生の何人かで飲むんだってぇ!偶然装おって行こぉ。乱入だぁぁ」  絵里香がずっと見つめていたスマホから視線を上げ提案した。その視線はスマホをぼーっと見ている翔に向けられた。タバコの煙を吐きながら、翔がスマホを見たまま「行くかー」と怠そうに答える。 「翔ちゃん行くなら、茉優も行く」 「まじ?みんな行く?俺、バイト休むわ」 「なっちゃんさぁ、クビになるよぉ?たまにはバイト行ってあげぇ」 「飲みに行かない選択肢はないだろ。みんな行くのに」  翔はスマホを見るのを止め、タバコに火を付けた。少々苛ついているのは、浩輔からラインが返って来ないからだ。 「明日休みだし朝まで、飲もうぜ」  とびっきりの笑顔で翔は3人に笑い掛けた。
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