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当然、いつまで待っても、うんともすんとも返っては来ない。
しかし、その場で静かに耳を澄ませるホクアースには、
山の静寂が地球の反応そのものであるように感じられた。
「分が悪くなった途端にだんまりか。
どうしても自分から動かないのなら、俺らが無理にでも動かすぜ」
そう言うと、彼は任務の依頼者であるナナースと、早急に通信を繋げた。
「こちら、ホクアース。ナナース、応答せよ」
「はい。こちら、ナナース。任務がまだ終わってないみたいだけど?」
「そのことについて話がある。
今回の事件は、太陽の犯行に見せかけた、地球の仕業だった。
よって、ナナースは至急、南極点へ向かってくれ」
「行動理由は?」
数秒の間を空けて、ホクアースは新たな任務の全容を告げる。
「地軸を回すのさ」
天体指導係史上類を見ない、大胆な計画に打って出た。
「現在、地球は自転義務を放棄している。
自然に再開する目処も今のところ立っていない。
そこで、俺が北極点に行って、南極点のナナースと同時に地軸を動かし、
1日のサイクルを強制的に復活させる」
「了解。只今より、任務を遂行するわ」
無謀な計画にも関わらず、彼女は質問無しに二つ返事でこれを引き受けた。
「お互いの健闘を祈るよ」
その後すぐに、2人の天体指導係が軽々とした身のこなしで、
向かうべき極点へ足早に駆けていったことは言うまでもない。
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