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3
片や一般社会では、外の景色と時計の示す時刻との不一致が、
多大なる混乱を招いていた。
天体指導係の任務が完遂されない限り、パニック状態が収まることはない。
一刻も早い自転の再開が強く望まれた。
「準備はいい?」
ナナースの呼び掛けに、ホクアースはたくましい声で応じた。
「あぁ!」
気構えは万全。あとはイメージ通りに事を運ぶだけのように思われた。
「せーのっ!」
2人は幾度となく全身全霊で地軸を押すが、びくともしない。
極寒と呼ぶに相応しい過酷な状況下で、
手は悴み、地軸の根本は想像以上に強固になる。
己の非力さと深い絶望が2人の前に立ちはだかった。
「駄目だ。太陽と張り合えても、ここまで意味がないのか……」
端の見えない巨大円柱をたった2人で回転させる構図を考えれば、
至極妥当な結果であろう。
しかし、多少なりとも自信のあったホクアースにとっては、
太陽との一件も相まって、感じるショックがあまりにも大きかった。
「大丈夫、そんなに抱え込まないで。もう1回やってみよ!」
「いいや、2人でやって歯が立たなかったろ!
こんな経験は初めて、別にこれ用の道具も造ってないしさ。
終わりだよ。さっきから何もかも上手くいってない。
何度挑んでも、ここの闇が晴れることはないんだ」
ナナースの温かみある気遣いも、閉ざされた彼の心には伝わらなかった。
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