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 片や一般社会では、外の景色と時計の示す時刻との不一致が、 多大なる混乱を招いていた。 天体指導係の任務が完遂されない限り、パニック状態が収まることはない。 一刻も早い自転の再開が強く望まれた。  「準備はいい?」 ナナースの呼び掛けに、ホクアースはたくましい声で応じた。 「あぁ!」 気構えは万全。あとはイメージ通りに事を運ぶだけのように思われた。 「せーのっ!」 2人は幾度となく全身全霊で地軸を押すが、びくともしない。 極寒と呼ぶに相応しい過酷な状況下で、 手は(かじか)み、地軸の根本は想像以上に強固になる。 己の非力さと深い絶望が2人の前に立ちはだかった。 「駄目だ。太陽と張り合えても、ここまで意味がないのか……」 端の見えない巨大円柱をたった2人で回転させる構図を考えれば、 至極妥当な結果であろう。 しかし、多少なりとも自信のあったホクアースにとっては、 太陽との一件も相まって、感じるショックがあまりにも大きかった。 「大丈夫、そんなに抱え込まないで。もう1回やってみよ!」 「いいや、2人でやって歯が立たなかったろ!  こんな経験は初めて、別にこれ用の道具も造ってないしさ。  終わりだよ。さっきから何もかも上手くいってない。  何度挑んでも、ここの闇が晴れることはないんだ」 ナナースの温かみある気遣いも、閉ざされた彼の心には伝わらなかった。
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