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両極点にホッキョクグマとペンギンの大群がそれぞれ集結した。
「せーのっ!」
以前の何倍もの力が一斉に地軸へ加えられる。
明らかな回転は確認できなかったが、甲高い音が微かに鳴りはした。
「もう1回行くぞ! せーのっ!」
ホクアースが自ら身振り手振りを交えて、種族の枠を超えた指揮を執る。
地軸から発生する音は着実に大きくなっていた。
「これで決めよう。せーのっ!」
けたたましい地響きが地球全体を震わせる。
問題児である惑星が渋々目覚めた瞬間であった。
「……やったよ!」
「やった! これでまた1日が始まる!」
いかなる生物においても、喜びの表現方法は大して変わらない。
自然の変化を察知する能力は、人間より他の動物の方が高いくらいである。
ホクアースはこのとき初めて、
自分の仕事に感謝する者の様子を目の当たりにした。
それは、彼に人生の価値を見出させるには、十分すぎる盛り上がりだった。
共通の目標への敢闘を、ホクアースはホッキョクグマたちと労い合う。
野生の手荒い祝福を受けた彼は気付かぬうちに、
込み上がる想いを素直な言葉に変えていた。
「ナナース、これからもよろしくな」
元気に飛び跳ねるペンギンたちに埋もれながらも、彼女は微笑んで答える。
「うん! こちらこそよろしくね、ホクアース」
自ら孤独に突き進んでしまうウィークポイントを、見事に克服したホクアース。
彼が天を仰ぐと、西方に沈みかけている満月が一回り大きく見えた。
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