おやすみ、わたし。

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私は立て膝をついて床に座ったまま、頭をパリパリと搔きました。 みんなに崇められている作者なんだから、プライベートだって充実してるように見せたい。だから、彼氏がいることにします。友達がたくさんいる人気者なんだということにします。 会社では、単調で地味な事務作業をしています。お給料はさほどよくありません。おじさんが多い部署で若い女性も数人いますが、私は彼女たちとのランチに誘われません。 同じ位の年齢の男性と話したのはいつが最後でしょうか。大学を卒業して3年経ちますが、この3年間、ほとんど男性と関わりがありませんでした。 友人もいません。先日久しぶりに連絡してきた知人がいましたが、宗教の勧誘でした。 ブランド物のグロスをくれる彼氏もいないし、カフェに誘ってくれるような友人もいない。 毎日、決まった時間に起きて出社して仕事して、退社して、それだけの日々。 でも、私はみんなとは違います。 なんてったって、私には何十万人もの読者と、3万人ものフォロワーがいる。 現実が糞でも、ネットの中での私は人気小説家。 崇拝されている神作者。 人気者で、みんなの憧れ作者。
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