番外編 真夏の彼 ※

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「二人とも、おっそーい。もうお昼にしようよー!」  蓮たちの元へ戻ると、シャチでひと泳ぎしてきたらしくて、二人はバスタオルで体を拭いているところだった。 「ごめん、ごめん。今、用意するね」  一路が大きなランチボックスを開ける。 「やっほおおおお!!!」  蓮の歓声が上がる。俺も唾を飲みこんだ。  次々と取り出される料理は、どれも食欲をそそられるものばかりだ。  鶏むね肉の一口ガーリック焼き。  豚肉の味噌漬けハム。  半熟卵の味玉。  赤ピーマンと玉ねぎのカレーマリネ。  甘い卵焼きに茹で枝豆。  トウモロコシごはんの三角おにぎり。  梅しそじゃこの俵型おにぎり。  皆で手を合わせる。 「いっただきまーす!!」  これを作るのに、一路は何時に起きたんだろう。ぎゅっと胸が痛むような切ない気持ちになる。今日みたいな日は、海の家で食べてもいい気がするんだけどな。 「あれー? 卵が二種類ある。今日の卵焼き、甘―い! いつものじゃないね、(いち)にい」  口いっぱいに卵焼きを頬張った蓮が言う。  綺麗に巻かれた卵焼きをぱくりと食べて、俺は思わず笑顔になった。 『甘い卵焼きが好きなんだ』  前に言ったこと⋯⋯覚えていてくれたんだ。目が合った一路が真っ赤になっている。 「すっげー、美味(うま)い!」 「だろ! 一にいの作るごはんは最高なんだ!!」 「そうだな。蓮の言う通り、最高だよな」  蓮と俺は顔を見合わせて笑った。あまり表情を出さない耀二も笑っているし、一路は赤い顔のまま、うろうろと視線を泳がせている。  食事が終わった後、蓮と耀二は昼寝をすると言う。  俺は一路と二人で海に向かった。  今日は風もなく穏やかな日だけれど、午後の波はすぐに満ちてくる。  一路に手を伸ばすと、びくりと肩が震えた。 「一路、手、繋ぎたい」 「うん」  お互いに伸ばした手を絡めて、黙って砂浜を歩いた。サンダルを途中で脱いで、人が少なくなった海に入る。 「うわ、結構冷たい」 「午前中より波が強いね」  遠浅の海は、なかなか深くならないから、まるで造波プールの中にいるみたいだ。  二人で何度も波を飛び越える。そのうち、ざばっと潮水を浴びて、お互いにずぶ濡れになった。
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