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「何を想像してんの?」
ここまで言われると、もはや純粋に気になってくる。
「都合のいい男になるなよ」
「そんな器用なことできないと思うけどなあ……」
カレーライスを口へ運びながら、颯は千晃を思い返す。本気で赤面する顔は、男慣れしているとは到底思えない。颯の周囲で、彼に興味を持つ人も聞いたことがないし。
そういう点では何の心配もいらないなと含み笑いを浮かべる颯の向かいで、友人はチッチと指を振る。
「わかってないのか。お前はすでに都合のいい男扱いされてるよ」
「いつ――」
「颯!」
聞き返そうとすると、彼を呼ぶ声が遮る。二人は同時に声の方を向いた。
「オオカミ先生が探してたぞ。なんかすっごい機嫌悪かったけど」
「なんかしたのか、お前」
同情と憐みの視線を浴びながら、颯は首を捻った。
「何かした覚えはないけど……とにかく行ってくる」
また後でと言いおいて、颯は食べかけのカレーを乗せたトレイを持って立ち上がる。小走りに遠ざかっていく背に友人がぼそりと呟いた言葉は雑音にかき消された。
「そういうところだよ」
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