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「なんか言ってました?」 苛々する千晃に気付いていない様子で、颯はスマホを弄りながら聞いてくる。とても年上に物を尋ねる態度には見えない。 「いや、お前がいないって言ったら切られたよ。俺はこれから会議だから、さっさと出て行け」 つんと素っ気なく顔を背けて、パソコンをオンラインに繋ぐ。颯が何か言いたげな雰囲気を醸し出しているのはわかったが、結局彼はそのまま静かに部屋を後にした。 扉が閉まる音を聞いて、千晃はうんざりと首を振った。 今のはさすがに大人気なかった。彼の些細な言動にいちいち反応してしまう自分に腹が立つ。 余裕がなくなっている。相手は十歳も年下だぞ。こんなに動揺させられていてどうする? だが千晃は人との距離感がわからない。今まで他人と深く関わることを避け続けてきた。そのツケが一気に回ってきたかのようだ。 どう反応して、どう表現すればいいのかさっぱりわからない。 「失礼します」 から、と控えめに扉が開き、千晃はびくっとした。また颯が忘れ物でもして帰ってきたのかと気を引き締めたが、違った。
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