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視線の先にいる小柄な女性は、見覚えのない学生だった。 彼女は入り口に立ったまま、千晃には見向きもせずに散らかった研究室の中へ視線を飛ばす。その焦ったような、不安そうな様子からある人物が浮かぶ。顔は知らないが、もしや―― 「神崎さん?」 ついさっき、颯に電話をかけてきた名前だ。直感で尋ねたがどうやら当たりだったらしい。彼女はえ、と驚いたような声を上げてやっと千晃と視線を合わせる。 「あの……」 「片霧を探しに来たんじゃないか?」 その言葉で、千晃が数分前の電話の相手であることに気が付いたようだった。彼女は少し警戒心を解いて頷く。 「そうです。ここに戻ったって聞いたので」 わざわざ追っかけてきたのか。 千晃は努めて感情を出さないことに集中した。そのため、自分の声がいつも以上に不愛想に響く。 「彼なら研究室に向かったよ。今いけば追いつくんじゃないか」 「そうですか」
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