12人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
僅か数メートルの距離でも、着く頃には全身水浸しになっていた。濡れた身体に吹き付ける風が、8月とは思えないほど冷たく感じる。小さく身震いしながら鍵を開け、急くように中へ転がりこむと、すぐに颯が続いた。
背後でバタンとドアが閉まる音が響いたかと思うと、肩を強く掴まれぐるりと身体を回され、壁に押し付けられる。その時には熱く唇を塞がれていて、千晃は低く呻いた。
長く濃密に舌を絡ませて、やっと満たされたように颯はゆっくりと顔を引いた。
「……びちょびちょですね」
「そりゃ あの雨の中走ってきたからな」
ふと押し付けられた身体が濡れているのに気付き、千晃は首を傾げる。
最初のコメントを投稿しよう!