12人が本棚に入れています
本棚に追加
二人でのシャワーをたっぷり堪能して、颯はリビングのソファで千晃の髪を乾かす。柔らかな髪に指を通したとき、着信音が響いた。同時に颯のスマホを見やる。
颯はドライヤーを止め画面を確認し、たじろいだ。その様子を見ていた千晃が冗談っぽく言う。
「なんだ、浮気か」
「そんなわけないでしょ!」
本気のトーンで否定すると、千晃はわかっていると言いたげに辟易と肩をすくめた。その間に着信はやみ、颯はほっとする。
髪を乾かす作業に戻りながら白状した。
「実は別の研究室の後輩なんですけど、何というか、かなり連絡が多くて」
「研究関連?」
「元はそうだったんだけど、最近はまったく関係ないですね。食事に誘われたり、ただの雑談だったり」
そう言うと千晃は黙り込んでしまった。もしかして嫉妬してくれているのだろうかと、不謹慎ながら内心ドキドキする。
ストーカーと言うほどではないが、少し付き纏われている、というのが颯の率直な印象だった。
最初のコメントを投稿しよう!