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「服部ーー!」
予定通りの時刻に、小鳥遊は一つしかない改札を出てきた。小さなスーツケースを引き、迎えに来た俺に大きく手を振る。
明るい髪色に、少し奇抜な服装。保守的な年寄りの多い田舎では目立つその外見に、少し心配になる。小鳥遊はこの町で、楽しく暮らせるだろうかと。
「西日本縦断ぶらり旅だったわ!」
家から五時間半の道のりだったと笑いながら、小鳥遊は長く細い脚を折りたたむように、駅前に停めた俺の車に乗り込んだ。
「旅じゃなくて引越しだろ。荷物、そんなちっさいの一個にまとまったのか?」
「とりあえず全部新居に送っといた。明後日着くってさ」
「仕事とか家とか、全部片付いた?」
「まぁ、うん、なんとか。二年ぶりだってのに、この辺てホント変わんないなぁ」
小鳥遊が今日まで暮らしていた都会では、きっと街の景色がどんどん変わったんだろう。田舎道を走る車中に響くカントリーロードの鼻歌に、ちょっと複雑な気分になった。
「あ、鳥居」
車窓に見えた鎮守の森に、小鳥遊が声を上げた。
「懐かしいなぁ。初めて会った時さ、服部のこと完全に幼児だと思ったんだよね」
無理もない。中二まで俺はチビだったし、あのとき小鳥遊との身長差は十センチ以上あった。だから俺だって、助けてくれた子は「隣の小学校のお兄ちゃん」だと思ってたんだから。
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