鳥居の下にて

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「お兄ちゃん」と再会したのは、三ヶ月後の夏祭り。俺は神社の境内で、わたあめの列に並んでいる子どもに声をかけた。 「あ! 俺、覚えてる? この前、助けてもらった、はっとり」  その子はびっくりした顔で振り向いて、 「あぁ、久しぶり」  って笑った。覚えててくれたことが嬉しくて、まずお礼を言うべきだったのに、俺はずっと気になっていたことを聞いた。 「あのさ、名前なんていうの? 何年生?」 「たかなし。同じだよ、一年生」  小鳥遊は背が高いだけじゃなく、なんとなく周りの男子より落ち着いた雰囲気だったから、同じ学年だと知って驚いた。でも同時にすごく興味が湧いてきて、友達になりたいと思った俺は、小鳥遊が首から下げてた財布に描かれたカブトムシの絵を見て言った。 「たかなしさ、虫好き? ここの森で、朝カブトムシとれるよ。一緒に行かない?」 「ホントに?」  目を輝かせた小鳥遊と、翌日早朝に鳥居の下で待ち合わせをした。一緒に虫とりをしてその日は昼前に別れたけど、それ以降、夏休み中に何度も約束して鎮守の森で遊んだ。  夏の終わりには小鳥遊が隠れ家と呼んでいる廃屋を教えてくれて、お菓子やジュースを持ち寄って夜まで過ごしたりもした。  夏草の匂い。蝉の大合唱。小鳥遊が持って来た蚊取り線香の煙。一個のとんがりコーンを賭けて、バカみたいに真剣に闘ったトランプの「スピード」。  気が合うのはもちろん、もしかしたらお互いに、ちょっとした背徳感と秘密の共有を楽しんでいたのかもしれない。他校の子と遊んでる。学校や塾以外に秘密の友達がいる。それが楽しかった。
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