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目を開けるとガラス越しに綺麗な青空と太陽の光が降り注いでいるのが分かる。
周りは温室育ちの薔薇が何種類も植えられていた。
私が入っているベッドにも野薔薇の蔦が絡まり深紅の小さな蕾をつけていた。
私はこの温室からも、ましてやこの横たわっているベッドからも一人では動くことも出来ない哀れな少女。
けれど、そんな私にも年に一度だけこの呪縛を逃れることができる。
それは、私が可憐で美しい花を咲かせるときだ。
そのときになると必ず私に会いに来てくれる人がいる。
その人の瞳は空や湖よりも澄んだ青をしていて、髪は朝日に照らされ黄金に染まるライ麦のように金色、肌は雪のように透き通り真っ白。
その人は私と同じように自分の足では遠くに行くことは出来ない。その人は生まれた時から家の外に出ては行けない決まりなのだ。
けれど、私が花を咲かしたことを知ると朝でも夜でも会いに来てくれる。そして私に話しかけてくれる。
そして今年も私の花は咲いた。その人も会いに来てくれた。けれど、今年のその人の様子は少し違って見えた。
目の下にクマが見えるのは、満月の逆光のせいかしら?肌が一段と白くほのかに光輝いているのは満月の光のせいかしら?
少し様子が変わっても私には関係のないこと。私は貴方がいる限り、花を咲かせ続ける。
私は貴方ただ一人の為の薔薇乙女〜ローゼンメイデン〜
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