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「真衣は何でも自分の中で完結してしまって、相談なしだよね?なんで、即、別れるという話になる?阿久津の気持ち、ちゃんと確かめた?僕にも相談ないし。たまに、すっごい阿久津と真衣との間に温度差感じるんだけど」
「温度差って何?」
「だってあいつ、今度、ウチの親に挨拶に来るて言ってたぞ・・・・それなのに、真衣は別れ話してるし・・・・・まぁ、その様子だと、阿久津の家から、かなり言われたんだろうけど」
何も答えない私の様子に真尋が再度、溜息をついた。
こうゆう時の真尋の視線は冷たいくらいに鋭くて・・・・
「何を聞かされた?真衣が阿久津と別れるように追い込むような事を言われたの?」
真尋は何でもお見通し。そんな真尋が苦り切っているように見えるのは、きっと今の私が悲しい気持ちになっていることが分かってしまっているから。
いつだって、真尋は私の味方だもんね。私の気持ちに寄り添ってくれる。
「阿久津君の方が先に、私に会いたくないって言ったんだよ。だって私、阿久津君の家にも行ってみたもん、真尋に教えてもらった住所。そしたら、インターフォン越しに、そう言われて追い返された。だから、もうウチの親に挨拶とか、訳わかんないし。それに、そもそも阿久津君、ウチの両親と面識あるじゃん。挨拶とか、今更・・・・」
「その挨拶の意味が将来を見据えてのことだということぐらい、さすがに真衣でも分かるよね?そもそも阿久津が真衣に会いたくないなんて言うはずないし。ちょっと考えれば、分かることだろ?真衣はそれでいいわけ?」
真尋の口調がいつもよりキツイ。かなりイラつかせてるのかも。
「だって、もう終わったことだよ。結果出てるじゃん。きっと、私が上手く立ち回れなかったというか・・・・女性らしく、可愛く、阿久津君のこと支えるとか、私、無理だし。だから、せめて、最後ぐらい・・・阿久津君が言いにくいなら、私から別れてあげるのが1番かなって・・・・ほら、そう考えると、私って、結構、男前じゃない?」
空気を和らげたくて、カラ元気に言い切ったのに、真尋は何も言わなかった。
逆に真尋の視線はさっきより冷たくなってきている。ここまでくると、この部屋の空気は氷点下だ。空気が冷たすぎて、呼吸するのも苦しくなりそう。
「この際だから言葉にしておくよ。阿久津の言う挨拶って、結婚の許可してもらうための挨拶。卒業と同時に結婚、少なくとも婚約って流れにもっていくつもりらしいよ、阿久津は・・・・今でもね」
「そんなの話違うし」
阿久津君がウチの親に正式に挨拶に来る日はそんなに遠くないかもって思ったこともあったけど。
「阿久津が真衣に会いたくないとは絶対言わない。ウチの両親への挨拶のことは阿久津から聞いてないの?」
「聞いてないし。・・・確かに、前はちょくちょく、朝の挨拶みたいにそんなこと言ってた時期もあったような・・・・でも、だって阿久津君はあの人と結婚することになったからって言われたんだってば・・・電話もつながらなかったし、メールだって・・・・」
「あの人って・・・真衣はお見合い相手に直接会ったっていうこと?誰に言われたのか知らないけど、結婚するなら阿久津は真衣のことしか考えてないと思うけど」
真尋はそう言うけど・・・・
一度じゃ諦めきれなくて、実はその後も何度か阿久津君の家の近くに行ったことがあって、そんな時に見てしまった。とてもお嬢様然としていて、華奢でキレイで、可愛いらしさもあって、私とは真逆の女性。門扉のところで向かい合う二人はとてもお似合いで。阿久津君って、ああゆうタイプが好きなんだなぁ、なんて納得してしまった。そんな二人をコソコソ見ている自分が、なんかストーカーじみていて、惨めで・・・自身がキライになりそうだった。
阿久津君にお似合いなのは、彼女だ・・・私じゃない。
堂島さんの言う通りだと思った。
だから私はサヨナラしなきゃいけない。
大好きだったよ、阿久津君・・・・
凜杏って、もう一度くらい呼んでみたかったな・・・・今更だけど。
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