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俺の話も聞いて
俺は真尋の指示通り、真衣ちゃんとの話し合いを扉の外でスマホを通して聞いていた。
「真衣、もしかして、その阿久津の見合い相手からも何か言われたの?阿久津、ちゃんと直接、真衣に説明したかったみたいだけど、お父さんの病院に行ったり、会社に呼び出されたりで、かなり多忙だった時期もあったって。それに一時期、スマホまで失踪したらしくて・・・・経緯はよく分かんないけど、多分隠されたか、盗まれたか。結局見つからないままだって言ってた。確かに連絡をきちんと取ってこなかった阿久津がまず悪いけど、阿久津からの説明を待たずにサヨナラだけ言って席を立つって、それっきり連絡を拒否ってる真衣の態度にも賛成できない」
真尋でも、真衣ちゃんに意見することもあるんだなって思った。一応、公平に話を聞こうとしてくれてるみたいで、ちょっとホッとする。
真衣ちゃんが別れ話をしてくるまでに、きっといろいろ言われていたのに違いない。堂島は何も俺には言って来なかったけど。
真衣ちゃんに直接、説明したくて、でもなかなか時間がとれなくて。
せめて電話かメールでもって思っていたのに、スマホが行方不明になるって、もう作為的な意図しか感じなかった。電源が入っていないらしくてスマホの場所は結局、特定できなくなってたし。新しいスマホを入手して、データのバックアップを何とかして、やっとの思いで真衣ちゃんと会う約束を取り付けたら、別れ話って、もう・・・・不安にさせるつもりはなかったし、まして別れ話なんて想定外。
「だって、阿久津君のお父さんの会社のこととか、ちゃんと考えて欲しいとか秘書だか執事みたいな堂島さんって言う人に何度も言われたんだよ。もうさ、私の、私だけの気持ちじゃ、どうしようもないっていうか・・・・やっぱり不釣り合いなんだよ、そもそも。・・・・だから私はちゃんと就職して仕事一筋に頑張ろうって思ってるわけで・・・・」
堂島の奴、どれだけ真衣ちゃんにプレッシャーかけてくれたんだよって思う。彼が俺の立場を慮ってしてくれたことは分かってるけど、方向性は俺の望んだこととは真逆じゃないか。阿久津の家の跡目争いなんか、最初から興味なんてないし。もう義弟が生まれた時点で、俺が阿久津の家に引き取られた理由なんて無くなってるのなんて自覚してたし。
「真衣は頑固だよね。信じられない、阿久津のこと?真衣、直近の阿久津からの連絡、あの一方的な別れ話の後、全部スルーだよね?っていうか着信拒否してるよね?阿久津、真衣の大学まで行ったけど、会えなかったとも言ってたし。真衣、阿久津から逃げてない?」
ここまで真衣ちゃんに拒否られるなんて、ホントに・・・
神代さんにもアシストしてもらって、真衣ちゃんの大学まで行ってみたけど、察知したらしい彼女は裏門から逃げてしまったと聞いた。そこまで追い込んだのは俺なのかもしれないけど。
「逃げてるっていうか、もう結果出てるわけだし、会う必要ないし」
真衣ちゃん、結果は出てないから。俺のシナリオには全くない展開になっているから。今すぐにでも釈明したいけど、真尋からはいいと言うまで、入ってくるなと言われているし。
俺が自分からそばにいて欲しい、手放したくないと思ったのは、君一人。
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