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Plan B 発動しました
阿久津の登場に少しほっとして、二人から視線を外せば、抱きしめようとしている阿久津の胸を思いっきり押して、拒否ろうとする真衣の姿が視界の端に入る。
えっ、なんで?まだ意地張るつもりなの、真衣?
まぁ阿久津のあんな自信なさそうな顔を証拠写真として撮っておくのも面白いかもしれない。
しかし何やってるかな、二人共・・・仕方ない、そろそろ助け船を出すか。こんな三文芝居さっさと終わらせる。
「真衣?阿久津はね、僕が真衣に推した相手だよ。文句あるの?」
「文句とか、そうゆうのではなくてね・・・・」
阿久津も阿久津だ・・・なんで、ここまできて、真衣をしっかりと抱きしめておかない?だから監禁救出作戦で三角に遅れをとったんだろうが。
「真衣は僕の言うことなら何でも聞いてくれたでしょ?」
「それは真尋が体が弱いときの話で、今は元気じゃん」
そうくるよね・・・・じゃあ、プランBでも発動するかな。
「実は、最近、ちょっと体調が悪い時があるんだよね・・・」
拗ねて下を向いていた真衣の視線が上がる。いきなりの展開に気遣わしげに僕を見る。
途端にその双眸が揺れ始める。
「冗談だよね?」
ほら、僕のとこになると、真衣はすぐ顔色が変わる。分かり易いほどに、僕のことを心配してくれる。阿久津、心に刻んでおけよ。
「病院行ったほうが良い?一緒に行くよ」
真衣をだますような事は言いたくないけど。
「もし、また僕に何かあったらさ・・・」
「真尋、何言ってるの?」
ああぁ、きっと真衣、心配し始めちゃってる。
「真衣には阿久津がいてくれれば安心だと思ってるんだけどね」
「何それ?分かったから、ねぇ、ホントに具合悪いんだったら、一回病院行ってみようよ」
真衣の表情がどんどん険しくなっていく。
「真衣は阿久津と結婚するってことでいいんだよね?そうすれば、僕、安心して・・・・」
「安心して、何?私が阿久津君と結婚すれば、真尋は元気になるってこと?」
「なるよ。最近、真衣と阿久津のことばかり考えてたから・・・・」
「ゴメン、分かったから。真尋の言う通りにするから。私が心配かけたから、具合悪くなった?」
「それもあるかな。心配事が一つなくなるのは体にもいいかも。僕が入院している間も・・・・」
「入院って、また手術が必要とか?」
「留守の間、阿久津に真衣のこと頼もうと思っててさ、昔みたいに」
昔みたい、僕があの大きな手術を受ける前みたいに・・・・
そうとったんだろう真衣の目にみるみる涙が溜まっていくような気がした。
「また入院するくらい悪いの?ねぇ、分かったから、真尋、真尋の言うとおりにするから、病院行こう。いつから、いつから具合悪いの?」
「じゃあ、僕の言う通りにしてくれるんだね?真衣をお嫁に出すのは寂しいけど。さすがに最近、マズいかなって」
「そんなに?どこが痛いの?」
「ちょっと痛み止めも限界。最近、忙しかったから、なかなか病院行けなくて」
「痛み止めって・・・救急車とか呼ぶ?」
あぁ、真衣、泣かせちゃった。真衣の頬にとうとう涙が伝っていく。
僕は立ち上がって、阿久津をどかして、真衣の目の前に立つ。指を伸ばして、その涙を止めた。
真衣を抱きしめ損ねた阿久津はちょっと苦い顔をしている。
ざまぁみろ。
「真衣と阿久津のことは、もう大丈夫?二人がちゃんと結婚してくれたら、心配が一つ減るから」
「分かったから。真尋の言う通りにする・・・体調は?どこか苦しかったりするの?」
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