阿久津君の残念な日~番外編~

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そして、退社まであと1時間を切ったところで、イヤな予感は現実に変わる。 昼休みに真衣ちゃんとメールをして、幸せな気分を味わっていたというのに。 「真衣ちゃんと旅行なんて楽しみだな」とテキストを送れば、「私もスッゴイ楽しみにしてるよ♥」って返ってきた。ハートマーク付きに、もうニヤケがとまらなくなって、冷水で顔を洗ってから席に戻ったくらいだったのに。 今さっきの電話で、突如、明日の午前中に取引先とのパワーランチとゴルフの予定が入ったのだ。 場所はそんなに遠くないから、夕方前には真衣ちゃんと合流できそうだけど。 相手は新規取引先で契約前に社長同士の顔合わせをまずしておこうという話が急遽決まり、懇親を深めるため食事だけではなく、ゴルフまでセットになってしまった。パーティーを組むから、孝志だけではなく、俺まで参加させられることになるという展開。この状況下、新規取引先と言われれば、断れないし。 「また邪魔が入りましたね?」 意地悪そうに微笑む孝志が憎い。 「終わり次第、合流するから。父の送りはお願いしていいですか?」 「いいですよ。あの辺り、道が混みますからね」 社会人になって無理やり覚えさせられたゴルフは、生来の運動神経の良さもあり、勘所を掴むことも容易で上達が早かった。それが仇になったかな。 真衣ちゃんもスポーツは何でもOKだから、今度はゴルフにでも誘うおうか。手取り足取り教えるのも悪くない。彼女のゴルフをしている姿を想像しながら、少しだけ自分を慰める。
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