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イマジナリー
僕、伊原想太(いはらそうた)は今生死を分かつ瞬間です。
「や、やめてください!僕お金とか持ってませんよ!」
飼っている猫を探しに外へ出て
たまたまいつもと違う道を通って
そこにたまたま居合わせた怖い人たちに恐喝されています。
「ごちゃごちゃ言ってねぇで出すもん出せや!」
明らかにチンピラの風貌の2人組に絡まれ刃物をチラつかせられています。
「ご、ごめんなさいぃ」
持っていた鞄をその場に投げ捨て走り出した。
2人組は僕の鞄を拾い上げ中身を物色するが出てくる物はキャットフードと猫じゃらし、水の入ったペットボトル1本
「てめぇ待ちやがれ!」
金目の物がない事に激昂し追いかけられるが僕は振り返らずに走り続けた。
「はぁ、はぁ、何とか巻いたかな…でも鞄どうしよう」
「ミャアォ」
鳴き声のする足元を見ると僕の飼っている猫が体を擦り付けていた。
「ミケぇどこ行ってたんだよぉ〜飼い主は大変だったんだぞ〜」
猫を抱き抱えようと手を伸ばすとそれを避け歩き出し短く鳴いた
「まだ散歩するのぉ?もう帰ろうよ〜」
僕は嫌々ながらも見失わない様について行った
しばらくミケの後をついて行くと廃れた倉庫が見えてきた
「ここに何かあ…」
中から男性の怒鳴り声と女性の悲鳴が聞こえた
「ミケさん、ここは1つ何も見なかったし聞こえなかった事にして我が家へ帰ろうか?」
僕は少しづつ後ずさりながらミケに提案したがミケは真っ直ぐ倉庫に向かった
「コラコラ〜お取り込み中らしいから邪魔しちゃいけないぞ〜」
抱き上げようとした時ミケは走り出し倉庫内へ入ってしまった
「嘘でしょ…」
小さい頃、目の前で交通事故が発生しそれに巻き込まれ両親を亡くした、
その後、塞ぎ込んでいた時いつの間にか僕の傍に三毛猫が1匹擦り寄ってきた
それがミケだった。
僕の唯一の家族、そんな家族をまた失いたくない僕は倉庫内へ走り出した
「ミケ〜戻っといで〜」
入口付近で我に返り声を抑えながら辺りを見回すがミケは居なかった
返事をしてくれと心の中で強く思った
倉庫内に目をやると見てしまった。
倉庫内中央付近に麻縄で椅子に縛られた女とそれに銃口を突き付けるスーツ姿の男
「結構な上玉、これはいい金になる!俺もツイてるぜ」
「やめてください!死にたくないです!」
震えながら懇願する女、僕は思わず声を上げてしまった
「あ、あの!お取り込み中すみませんが!ね、猫、み、み、見ませんでしたか?」
絶対今言うべき言葉ではないだろ!と心の中で自分にツッコミを入れてしまった。
突然現れた僕に男は銃口を向ける
「誰だてめぇ!この女の知り合いか?」
「いえ!初対面です!」
僕は両手を上げ全力で首を横に振る
「助けてください…お願いします…」
女は涙声で僕に助けを求めた
正直打開策は何も無い
「お前は黙ってろ!」
男が女の髪を鷲掴みにし投げた
「見られちまったならしょうがねぇ、後で掃除屋頼むか、まぁ運が悪かったと思えや」
男は銃口をこちらに向け引き金を引いた
バン!
しかし放たれた弾丸は僕ではなく後ろの壁に当たりそのまま跳弾し男の頭上にぶら下がっていた鉄骨に当たった
そのまま鉄骨が男の頭上に落下し押しつぶされてしまった
誰が見ても即死だと思う程男は無惨な姿になった
「え?何が起きた?」
一瞬の出来事で脳が処理できない
兎に角、目の前の脅威は取り除かれ女は横たわっている
「大丈夫ですか!」
すぐさま女に駆け寄り縄を解いたがその時気付いた
あれだけ男の近くに居たにも関わらず鉄骨の下敷きになっていない、更には飛び散った血液すら付着していない
「ありがとうございます!助かりましたぁ〜」
女は僕に抱き着き涙を流しながら感謝したが僕は疑問しか出てこなかった
「所で、私の能力見ましたよね?」
「え?」
一瞬にして肝が冷える、冷や汗が流れ心臓が高鳴る
さっきまで泣いていた女とは思えない程冷たく静かにそう言った
「ソウタ!危ない!」
頭上の方から僕を呼ぶ声がする
それにハッとして女を突き飛ばすが足がもつれて後方へ転がる
「あれ?私に触れてその程度で済むなんて貴方意外と運いいんですね」
運?何の話をしてるんだ?運って運勢とかそういうの?
「ソウタ、大丈夫?」
さっきの声の主が目の前に現れる
獣の様な四足歩行
毛むくじゃらの体躯
3色の毛並み
ギラギラと光る2つの目
足には鋭利な爪
首には赤い首輪
声の主はミケだった
「み、ミケさん!?喋れたの?」
唯一の家族がいきなり喋りだした
もう何がなんだか分からなくなった
「まぁ!可愛い猫ちゃん!」
女がミケに近づく
僕は咄嗟に走り出すが1歩目で思い切りコケて頭を強打し意識が薄れる
「あらら、運がないですね、この人どうしましょ?」
それを最後に完全に意識が途切れる
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