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「さいごの言葉が『きもっ』て、ひどくない?」
仮想現実カプセルから出て、魔術師マリリン――いや、すでに真理恵となっている妻に重い足を運ぶ。
仮想現実とは言え、最新型カプセルのなかでは仮想空間で体験したことをリアルに感じられる。三日間寝ずに戦い続けた俺の身体の節々は痛み、目もかすむ。
ぼやけた視界のなかで、ピンクのツインテールよりも茶髪ショートが似合う妻はエプロンをつけだしている。
「だって。佑みたいにいつも笑ってるような糸目なら違和感ないけど、丸目のイケメン顔でやられると、あからさまっていうか、下心がある感じがして気持ち悪いのよ。
あー思い出しただけで悪寒がする。やっぱりこの顔が落ち着くな」
アーサーから浅沼佑となった俺の丸いほほを真理恵はむにむに触った。
けなされてるのか褒められてるのかわからないが、妻が幸せそうだから喜んでいいだろう。
「ふふ。それで見えてるの?」
より細まった俺の目をのぞきこみ、手をとってきた。
妻の手に誘導されるがまま部屋のなかを進む。
「さあ。おやすみなさい」
たどり着いた先はベッドで、俺は強制的に寝かされた。
いつもの癖でサイドテーブルのゲーム機に手を伸ばす。が、空を切った。真理恵がゲーム機を持ちあげている。
「こうでもしないと、ゲームに手をつけてやすんでくれないじゃない」
ありがた迷惑な言葉にはかまわず、俺は起きあがってタブレット端末をさがす。
眠る前にVRを楽しんでからベッドの上でぐだぐだゲームをするのが、俺にとって癒しのひとつ。ゲーム機とタブレットのゲームを同時並行で起動させているときは最高だ。
そろえば文句はないけど、どちらかあればそれはそれでいい。だから、タブレットはどこだ?
「お探しのものはこれかしら」
タブレットも真理恵が持っていた。
「お願いだ。使わせてくれ」
「お願いだからやすんで」
あと一歩で俺の幸せを奪う悪魔をつかまえるところで、寝室のドアは閉ざされた。
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