人生に休憩を

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―――なッ!? 居ても立っても居られなくなり憩吾は衝動的に席を立った。 講義中ということもあり、視線が突き刺さる。 「憩吾? どうした?」 「悪い、ちょっと急用!」 近くにいる友人に声をかけられるも荷物をまとめた。 人命がかかっているとなれば、他に優先すべきことなどなく大学を出ながら慌てて返信を打つ。 『今どこにいるの?』 『・・・学校』 『学校から出てこれる?』  メッセージには既読情報が付くだけで返信は来なかった。 ―――安未果さんの真面目な性格のことだから、学校を抜け出すことに抵抗があるんだろうな。 ―――・・・でも今は、そんなことを言っている場合じゃないから。 返事も待たず、続けて言葉を送る。 『俺は今、安未果さんの学校へ向かってる。 大丈夫、正門の前で待っているからいつでもおいで』 もう反応も見ることもしないで全速力で安未果の学校へと向かった。 バイトに制服で来ることも多いため知っていた。 ―――・・・あ、いた! 着くと丁度遠くから安未果が歩いてきているのが見えた。 憩吾の姿を見ると安未果は駆け寄ってくる。 そして安未果の顔を見て驚いた。 ―――・・・泣いてる? いつもは頑なに自分の感情を表に出さなかったというのに、今はとてもか弱く見えた。 本当は分かっていたのだ。 彼女は強いわけではなく、あくまで強がっているというだけのことは。 ―――どうして今出てきてくれたのか、気になるところではある。 ―――普段の安未果さんでは考えられないことだから。 ―――・・・でも今は、そんなことを聞く時じゃないよな。 「抜け出してきてくれたんだね、ありがとう。 とりあえず・・・」 まだ学校は終わっておらず、このままだと学校にバレてしまうため正門を出て死角に入った。 そこで憩吾が着ている上着を安未果に渡した。 「これを着て制服を隠しておいてくれる?」 女子高生をこんな昼間から連れて歩く姿をあまり目撃されたくなかった。 下手したら警察に事情聴取されてしまうかもしれない。 「・・・これで、いいですか?」 「うん、ぴったりだ」 安未果は言う通りに着ると上手く制服は隠れたようだ。 「じゃあ行こうか」 そう言って手を差し出す。 「・・・どこへですか?」 「どこか自然が多く穏やかな場所。 今の安未果さんには休息が必要だから」 そう言うと躊躇いながらも手を取ってくれた。 近場には大きな噴水が有名な公園がある。 季節的に蝉の鳴き声が激しいが、それはどこもあまり変わらない。  単純に静かな場所を求めるなら室内の方がいいが、デートに誘っているような雰囲気になりそうで避けたかった。 「よかった、人はいないみたい。 ここでいいかな?」 「・・・はい」 丁度昼時ということもあり子供連れの親子もいなかった。 二人はベンチに腰を下ろし、憩吾から話を切り出した。 「今までよく頑張ってきたね」 「ッ・・・」 「安未果さん偉いよ。 お疲れ様」  そう言って頭を撫でてあげた。 すると安未果はより涙を流した。 「ご、ごめん! 何か気に障るようなことを言っちゃった?」 ―――思えば、先日のバイトでも似たようなことを言った気がする。 ―――言われて嫌な言葉だったかな・・・。 ―――それとも思わず撫でちゃったから・・・? 慌てふためいていると安未果は首を横に振った。 「・・・『大丈夫?』『何かあったら言ってね?』なんて言葉はいらないんです。 『お疲れ』『よく頑張ったね』って、その言葉をずっと待っていたんです」 「ッ・・・」
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