迷子

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迷子

「まずい、完全に迷子になった……」  館長から手渡されたぼろぼろの地図をくるくると回し、今いる展示室と照らし合わせてみても、現在地を特定できない。  さすが、世界中の芸術作品や歴史的遺品が結集するだけある。一日では回れないと言わしめる広大な敷地を、夜間はたったふたりで見回るなど無謀ではないかと天を仰ぐ。  ましてや、今日が初日の新米夜間警備員である私に、先輩夜警と離れてひとりで二階を回れなど無茶苦茶すぎる。  なるほど、苦行すぎて離職者が相次いだために、未経験の私でもすんなりと夜警の仕事に就くことができたわけだ。
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