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絵画潜入修復師
作業場にいたはずが、気がつけば黒い霧に囲まれ鬱蒼とする森の中に佇んでいた。
「ここ、何処? 何が起きたの?」
ランタンの灯りさえ通さない厚い霧を前に一歩も動けないでいると、突然肩を叩かれて盛大に悲鳴を上げた。
「悪い、悪い。何もしないから」
振り向き見れば、ランタンの灯りに照らされた男の顔があった。私の前に絵に吸い込まれていった男は、苦笑いを浮かべている。
「誰、何なのよ!」
「いや、落ち着けって。深呼吸」
男に促され、何度か深呼吸を繰り返せば少しだけ落ち着きを取り戻す。
「何で夜警がここにいる?」
「道に迷ってしまって、部屋の明かりが見えたから聞こうと思ったら……」
「彼女と目を合わせたな?」
「あなたは——」
「ギルバート•クリンフォード。絵画潜入修復師だ。知らない?」
頭をぶんぶんと横に振った。知っている、尊敬する職業の人に出会って感動さえしている。
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