違和感

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違和感

 でも、私はその瞳に違和感を感じていた。この絵の作者がメリアスだとはどうしても思えない。 「何か根拠はあるんですか?」 「メリアスの絵の空気を感じる。間違いなく、この絵にはメリアスの記憶が眠っている」  根拠としてはあまりにもずさんだが、絵画潜入修復師の経験から言えるものなのだろう。 「そういえば、誰かに似てると思ったら。メリアスの奥さんのジュリッサそっくりだ!」  ギルさんは興奮気味に、腰につけた鞄から一枚の古紙を取り出した。見れば、ジュリッサを描いたデッサン画の写しで、似ていると言えば似ているし似ていないところも多々あって微妙だったので愛想笑いを浮かべた。 「話を戻そう。この絵のモデルは恐らく彼の愛人のひとりだ」 「メリアスはかなりの好色だったらしいですからね」  授業で習ったことを思い出して、私は苦笑いした。  メリアスは妻のジュリッサとの間に娘が生まれるまで、何人もの女性と関係を持ってジュリッサを悩ませていたらしい。
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