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僕のおじいさんは、僕にとって、ただ二人の友達のうちの一人だった。
小さい僕と、六十を越えたおじいさんは、同じ本を読んで笑い、同じ物語を聞いて泣き、同じ森へ二人で探検に行き、同じように僕のお母さんに怒られた。
物心ついてから、いろんな歌や漫画を読んでいると、そこにはかっこいい主人公と頼れる仲間がたくさんいた。
そうすると、次第に、友達が少ないというのは、人間としてまるでだめであるということの証拠のように思えてきた。けれど僕にはおじいさんがいた。
中学一年の夏、そのおじいさんが病気で死んでしまった。葬式には、たくさんの人が来た。いつも「父さんは、いつまでも子供みたいにして!」と怒っていたお母さんは、言葉もなくただ泣いていた。
僕も、がらんとしたおじいさんの部屋の畳の上で、うつぶせになって泣いた。
おじいさんはもう、「どうした、こっちにおいで」と僕を引き起こしてはくれなかった。
静かになったおじいさんの部屋で、一人寝転んでいたら、机の下におじいさんの日記を見つけた。
達筆なのか下手なのかよく分からない字で書かれた文章は、読みづらくてしかたなかったけれど、僕はそれを少しずつ読むことにした。
その数日後、おじいさん以外で唯一の僕の友達だった、近所の歩実が交通事故で死んだ。
僕はなんだか、この世界にひとりぼっちになったような気がした。
寂しくて寂しくて仕方がなかった。仲のいい人がいなくなった世の中で、明日も生きていくことが、おっくうでたまらなかった。
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