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「夜月さん?」
「百瀬くん、えっと」
私は目を逸らしながら後退る。
今までこんなミスした事なかったのに……。
いや、その油断が原因かも……。
百瀬くんは驚いたような表情のままこちらに近づいてきた。
「夜月さん、大丈夫?あ、夜月さんは大丈夫か。大丈夫じゃないのはこっちの人たちか」
ただ、百瀬くんは表情とは裏腹に冷静な物言いだった。
見慣れてるというか、普通は怯える筈なのに全然余裕そう。
頭のてっぺんから指先までまったく震えていない。
百瀬時亜。
クラスの中心人物で成績優秀、運動神経抜群。その上にイケメンで性格もいいという少女漫画に出てきそうな男子だ。
サラサラの黒髪に色の白い肌、優しげな目元。
身長は平均的だがその中性的な感じがいいらしい。
らしいというのは、友人から聞いた情報を言っているだけだからである。
「あの、百瀬くん。この事は言わないでもらえない?私がどうにかするし」
しゃがみこんで男たちの様子を見だす百瀬くんに慌てて声をかける。
なんでこんなに落ち着いてるんだろう、この人。
疑問に思いつつ百瀬くんが顔を上げるのを待つ。
暫くして(おそらく)生死を確かめ終えると百瀬くんは立ち上がった。
その顔には僅かに笑みを浮かべている。
「わかった。あんまり深くは追求しないよ」
やけにあっさりしている。
というか、あっさりしすぎてて怖い……。
絶対何かあるやつだ。
そして、私のこの予感は的中した。
「そのかわり。夜月さん、僕の質問にいくつか答えてもらっていいかな?」
「別にいいけれど……」
やっぱり何かあった。
変なやつじゃなければいいけれど。
身構えていれば、百瀬くんはふっと笑みを深くした。
「夜月さんは夜月組長の娘さん、で合ってるかな?」
私は自分の顔から表情が抜け落ちるのが分かった。
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