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白く湿っている窓にいじけた翔が落書きをする。目が棒の丸い輪郭の簡易的な猫。指に溜まった水滴により猫は泣いてしまう。
以前よりも気温は低くなり、ストーブの焚かれた室内も吐く息は白い。
「進藤くんそろそろ戻りなよ」
丁寧にも、小枝が扉を指差す。
「寒いから廊下行きたくない」
「じゃあくるな」
「そう言わないであげて」
予鈴まで残り数秒。音の聞こえない秒針が時間を刻む。
「じゃあ、教室帰るわ。俺だと思ってこれ、食べて」
赤でも白でもわかりやすい長方形のお菓子の箱を小夜の机に置くと、そそくさと出ていく。
それからは、始業時間もあっという間に過ぎ、長い1日の中で見る最後の夕陽が烏を帰らせる。
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