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帰り道は、気付けば辺りが暗くなる。電信柱に取り付けられている街灯が定められた間隔をあけて、夜道を照らす。悴む指先が氷のように冷たい。
眩しい光の下に足を踏み入れる。
そこで、小枝が言うのだ。僕らはお互い必要不可欠だと思う、と。意図の読めない始まりに困惑顔をするが、小枝は前を向いたまま歩き続ける。
「僕は、神寺くんが隣にいてくれればそれでいいと思ってた。恋とか愛情とか、よく分からなくても大人になれば解決してくれるって。今もその考えは変わらない。家族は別として。けれど、それが当たり前で、望まなくても手に入るとも思ってた。でも、望まれて、望んで、欲しい言葉が手に入らなかったら、寂しい」
赤く染められた頬や鼻。こんなにも冷えた寒空で彼は溜息を零した。手袋もせず、小刻みに震える両手は温められない。
追い越す自転車のタイヤがからからと回る。
「・・・・・・今日、マフラーも手袋も忘れちゃったから寒いね」
小枝はうん、と頷く。
「神寺くん家の今日の晩御飯は?」
「今日は鍋だって。昨日、ヒデさんからいっぱいセリをもらったらしい」
「じゃあ、僕の家もかな」
「たぶん」
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