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そこへまだ起きてるの、と扉をたたかれる。
画面を伏せて、冷たくなっているレバーハンドルを下に押し、扉を開けると、母の紗子と目が合った。
「また・・・少し背が伸びたんじゃない?」
紗子の両手は塞がっていた。ふわりと立ち上るお茶と三角形のおにぎりが2つ、たくあんが2枚、半月盆に乗っている。夜食を作ってくれたらしい。
「程々にね」
夜食を受け取った小夜は、決して平とは言えない教科書と重なるノートの上に置く。今にも溢れてしまいそうなお茶が湯飲み茶碗限り限りを波打った。
腰を下ろし、両手を合わせてからおにぎりを一口、二口。具は入っていない塩だけのシンプルな味付け。紗子の小さな手で握られた三角形は、口に含めた途端にほろほろと崩れてしまう。柔らかすぎるそれを1枚の海苔が包み込む。祖母の味なのだと腕を振るうのだ。
最後のお茶を啜った頃には、時刻は1時だった。例え、次の日が休みだったとしてもこの時間まで起きているのは如何なものかと思う。
今日、初めての欠伸を見せる。眉間に皺が寄り、瞼を重たそうにした。
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