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休日の場合、大概は外へ出掛ける。今日の予定では、噂の面白いアニメを鑑賞しに映画館へ行き、夕方には帰るという計画だ。
待ち合わせのブロック塀で寄り掛かり、晴れている空を眺める。すると、おはようごさいます、と寒そうにロングコートとマフラーで身を包んだ人がやってきた。
「おはよう。コート、誠さんの?」
「うん、お父さんのお下がり貰った」
「ぶかぶかだね」
「これからだよ」
前日、連絡を取っていた佐藤小枝だ。前髪で隠れていることが多いが、実は瞼が一重で、常に眠たそうに見える。
「佐藤くん髪の毛切ったんだね。刈り上げ?触ってもいい?」
伸びた手を遮り、それより神寺くん、と流し目で訴える。
「昨日、寝落ちしましたね。既読無視が最近多発気味かと、その辺どのようなお気持ちで」
「申し訳ありませんでした」
偶にすれ違う自転車の荷台にはチャイルドシートが付いている。右脇を走行している保育園のバスの窓には沢山の黒い帽子がひょこひょこしていた。
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