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2話
炬燵にミカンは十八番、と彼は言った。
冬休みまで1週間を切った。
授業の合間を縫っては、遊びに来る元気っ子の進藤翔が小枝の発言に鼻で笑う。
「聞きまして小夜さん、得意分野が炬燵とミカンてどう思います?」
「十分な芸かと」
机に身を乗り出し、翔のセーターの袖に付いた白い埃を払う。同時に、4つ折りの紙が落下する。それを目で追っていた翔がしゃがむ。
拾ってくれるのは有難いのだが、なかなか立ち上がらない。彼の背中をじっと見つめていると、これは、と迫真の演技を見せたかと思えば、こちらを見上げる表情はいつになく真剣である。その様子に、小枝は口角を上げた。
「今日、受験対策しますって、急遽小テスト配られて、採点されたものになります。因みに、60点以上でないと再テストだそうですよ」
僕は80点以上なので、と付け加える。
「やめて。それ以上いじめないで」
「花柄先生は気合が違いましたね」
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