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秒針が秒数を刻む。 カーテンの奥にある冬天(とうてん)の夜道は、室内よりも冷えているだろう。そう思いながら眺める吐息は白く湿っていた。窓ガラスが曇っているのは、この季節になればよく見ている。カーテンの向こうを想像できる。 鉛筆を持つ手は止まっていた。 視線は時計へ注がれ、針が12を指そうとしている。溜息を()きながら、ゆっくりと背もたれに預ける。ぎし、と音を鳴らす。 ノートに(つづ)られた字面は先程まで直向きに取り組んでいた神寺小夜(かみじさよ)の文字そのものだった。握る鉛筆を置いて、冷えた左手を摩る。少しだけ長針が動く。 机の端に追いやられているスマートフォンがバイブレーションする。画面に表示される通知名には、【佐藤小枝(さとうさえ)】と書かれていた。慣れた指先で上へとスライドをする。 小夜の顔が綻んだ。口角が上がっている。嬉しそうだ。寒さで(かじか)んでいた左手にも熱を持った様子で、字を書いていたときよりも滑らかに動いている。当たり前なのかもしれないが、先程よりも元気だ。
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