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「俺たち照照坊主の活動日がいやに少なくなったと思えば、とんだ雨男を手に入れたようだな」
リーダーらしき男がスキンヘッドを輝かせながら言う。照照坊主のメンバーの中でも一際図体がデカく迫力がある。
「雨が続くと皆困ってしまうよ。雨はたまに降るから天からの恵みとして扱われるんだ」
「そんなこと言って自分たちが活動したいだけだろ!」
「そうだそうだ! ほとんどの天気が晴れを占めてるからって偉そうに!」
「お前ら晴れ男は活動しすぎなんだよ!」
負けじと呉郎たちが言い返す。
バチバチと両チームから火花が散る。
まずい。修羅場か。どちらも強面で威圧的な装いをしているため、互いが険悪な雰囲気だと死人が出そうな修羅場にさえ見えてしまう。
睨み合いが続き、呉郎と照照坊主のリーダーが「ならアレで決めるか」と言い出す。
アレと聞いた途端、両チームのメンバーたちは各々の楽器を持ち始めた。
「バンドならバンドらしく、音楽で決着つけようじゃねェか!!」
ギュオーンッ!!
雷鬼のギターを合図に、雷音と照照坊主はそれぞれにロックなメロディーを奏で始めた。
「うおぉ凄い爆音」
思わず耳を塞ぎたくなるくらいの騒音。
「平井ぼーっとしてんじゃねェ! お前も歌うんだよッ!! 」
呉郎がドラムを鳴らしながら叫ぶ。
照照坊主のボーカルは男とは思えない高音でまるでオペラのように綺麗なビブラートを連発する。しかし、演奏はかなりロックなもので、高い音色はギターやドラムと混ざり合い、パンクな感じを醸し出す。そのミスマッチが強力なインパクトを出していた。
それに従い空もお天道様がピカーッと顔を輝かせている。
なんという存在感。
だが、ミスマッチならこちらも負けない。
俺は歌い始める。
「そらを~かける~いぃかぁずぅちーのぉぉ!」
「ヒヤッハーッ! いくぜェ! 雷鬼、光鬼、轟ッ!!」
「ああ、見ろ照照坊主!」
「これが俺たちの」
「ロックだァァッ!」
演歌めいた歌声に、呉郎、雷鬼、光鬼、轟が楽器の音色をのせる。
激しい曲調に渋く平坦な声が交わりこれもまた絶大なインパクト。
空は晴れから大雨に変わる。
「まだまだ! こちらだって負けないぞ!!」
照照坊主たちもこちらに負けじと声を張り上げてくる。
空が晴れ渡る。
「こっちだって負けねェよ!!」
雷音も負けじと立ち向かう。
空が真っ黒の雨雲になる。
「ならこちらもォォ!!」
俺たちの音楽を奏でる戦いはヒートアップし、空は晴れから雨、雨から晴れと何度も天候を変える。
「なんだなんだぁ」
「急に降ったり止んだりどうなってるんだ」
急変する天気に驚いた人々が外に出てきた。
呉郎たちはお構い無しに演奏を続ける。
「うおお雨降れ雨ーッ!」
「晴れろ晴れろオォ!!」
その時。
目まぐるしく変わる天気は晴れと雨を繰り返しすぎて混乱したのか、空には盛大な虹がかかった。
七色の虹は大きく空と大地を跨ぎ、キラキラと輝いている。
「虹だ!」
「きれーい!」
外に出てきた町の人たちは虹を見て大喜び。
そして人々は公園で演奏する俺たちに駆け寄る。
「虹を呼び寄せるなんて兄ちゃんたち凄いな! 是非また演奏しに来てくれ!」
「よっ虹男!」
そんな声をかけられ嬉しくて思わず下を向いてしまう。呉郎も柄にもなく照れていた。
「君たちを邪険にしていたが違ったようだ。これからは仲良く一緒に活動しようじゃないか」
「おう。ずっと喧嘩なんてロックじゃねェよな」
照照坊主のメンバーたちとそれぞれ握手する。
やれやれ、一件落着か。
雷音と照照坊主の戦いは、一つの虹をつくることによって終息したのだ。
「それで、これがこれからのスケジュール表だ」
照照坊主のリーダーが呉郎に渡す。
その内容はこうだった。
『週五日……晴れ。照照坊主活動日
週二日……合同ライブ。照照坊主と雷音活動日
……以上、夜露死苦!』
静かにスケジュール表の紙を折り畳む。呉郎たちはわなわなと震えている。
言いたいことはわかる。
だってこれ……
「俺たちの単独ライブが一日もねーじゃねェか!!」
「しかもちゃっかり照照坊主は毎日活動してるし」
「ウオォあいつらやっぱり許せん! 決闘じゃーッ!!」
怒りのドラムロールが鳴った。
まったく和解しそうもない縄張り争いは未来永劫続くのだろう。
今日も明日も。
俺はやっぱり雨に振り回される運命らしい。
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